十行随筆 「鮎」
by うまじ~ - 8 月 24th, 2008.Filed under: 十行随筆. Tagged as: 鮎 温泉.
「どうしたんだ、それってここの名物だよ」
「そうか、最後にゆっくり食べるんだ。」
いつまでも箸をつけないのをいぶかった隣
の先輩が、声かけをし言葉をつないだ。
目の前の涼しげな皿の中の鮎は、昼間、近
くの渓流でにわか釣人を魅了した流れるよう
な美しさとは逆に、硬直した尾びれの折れ曲
がったところや小さな目が悲しげだった。
昭和三十九年盛夏。湯の山温泉白雲閣。宴
席で初めて見てから、焼き鮎は口にしない。
平成10年6月