うまじ~の十行随筆

ぴったり十行で表現する自作作品集

孫の言いわけ

by うまじ~ - 7 月 9th, 2008.
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我が家の一番下の孫は、四才になっても夜寝る時には、まだおムツをしなければなりませんでした。時おり孫に向かって、

「Aちゃんは、いつになったらおムツをしないで寝んねするんかねえ。」

と言うと、彼女からは次のような答えが決まって返ってくるのでした。

「だって、ミホちゃんだてタカくんだって、まだおムツしてるもん。」

ところが、そのミホちゃんもタカくんもやがておムツをしないようになりました。どうやら、保育園の同じクラスの中では彼女だけになってきたようでした。それでもまだ、

「ミホちゃんもタカくんも、Aちゃんより早く生まれているでしょ。だからAちゃんはまだしてもいいの。」

と、さも、当然といった口ぶりです。
そうこうしているうちに、さすがの彼女も少し恥ずかしくなったのか、ある日とつぜん、

「Aちゃん、もう今晩からおムツしない。」

と言い出しました。とは言っても、夜トイレに行きたくなってひとりで起きることなど到底できません。そうなると、毎晩一緒に寝ているバアちゃんは寝たら最後ま朝まで目が覚めない人ですから、夜中に定刻に起こす役目は当然私に廻ってきます。

最初の夜は、孫も失敗しないか不安そうでしたが、なんとか無事に朝が迎えられ、

「Aちゃんもおムツがはずせたねえ。えらい。えらい。」

とほめてやると、

「Aちゃんはおムツしないから、もう梅組さんになれるよね。」

と嬉しそうに言いました。それから後一度失敗はありましたが、今日まで年寄り二人の共同作業で無事にすんでいます。でもひとりで目を覚まして、トイレに行ってくれるようになるまでは、ずいぶん月日がかかることでしょう。

ところで、このおムツバばなれの早さについて、三人の孫を比べてみると、上から下になるほど遅れているようです。そして、そのわりあいは使い捨ての紙おムツの普及度にあるようです。

確か一番上の孫は、紙おムツでなく、布で作った昔ながらのおムツで育ったようです。二番目の孫のころから紙おムツが使われ始め、三番目となると、テレビのコマーシャルでお分かりのように、吸収力もすぐれ、赤ちゃんのお尻はいつも気持ちよく過ごせる、たいへん便利な紙おムツが登場してきました。

科学の進歩が人間の暮らしを便利にしていることは分るのですが、一方では、人間の自立を妨げているような気がしてなりません。

平成8年6月

 




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